研修と仕組みづくりの両輪で取り組もう
多くの事業所が接遇研修を行っていますが、研修をするだけで身につくものではありません。これは接遇に限りませんが、研修はあくまできっかけにすぎず、大切になるのは「現場の仕組みづくり」です。研修を何度繰り返しても、いくら研修で知識を入れても、仕組みをつくらなければそれで終わってしまいます。
接遇に優れた事業所になるには、研修で学んだうえで、現場で改善されたかどうかをチェックする体制を整えなければなりません。挨拶ひとつをとっても、本人はできているつもりでも「全然できていない」、あるいは「できていないことに気づいていない」という人が少なくないのです。本人が自覚して改善するところまで確認できる仕組みが必要なのです。
スタッフが介護のプロとして成長するために、また利用者に気持ちよくサービスを受けてもらうために、自分たちの事業所ではどうすべきかをいち早く取り決めましょう。
こんなチェック体制を整えよう
具体例をいくつか紹介します。すぐに実行できるものからはじめて、徐々に体制を整えていきましょう。
本人に動画で確認してもらおう
利用者役と介助者役を決め、ロールプレイをしてみましょう。「玄関先での対応」「トイレへの誘導」など、シーンを設定して、介助者役の様子を動画で撮影します。その後、本人に確認してもらいましょう。客観的に見ることで、自分の言動を振り返るきっかけになります。
利用者アンケートを実施しよう
訪問先の利用者や家族に協力してもらい、「ホームヘルパーの接遇について」のアンケートを実施するのも有効です。実際に接している利用者の声は一番参考になります。無記名にするなど、回答しやすい方法を考えましょう。
チェックシートを作ろう
接遇に関するチェックシートを作成し、訪問前後などにホームヘルパーに記入してもらいましょう。普段、何気なく行っていることも、チェックすることで各自の意識づけにつながります。
訪問先に同行しよう
接遇の様子をチェックするために、半年に1回などサイクルを決めて訪問先に同行しましょう。「チェックされる」と思うと、ホームヘルパーにとっては気分がよくありません。「利用者様の定期訪問」などを名目にするとよいでしょう。
監修/濱島しのぶ
株式会社しのコーポレーション代表取締役。接遇アドバイザー。全日本空輸(ANA)株式会社客室乗務員、特別養護老人ホーム介護主任兼教育担当等を経て、2007年より現職。文/元井朋子 イラスト/尾代ゆうこ