私達を待つのは支援・介助が必要な人達であることを忘れずに
介護サービスを受けている利用者は、加齢や病気のために体の機能が障害され、今まで自立してできていた日常生活に不便を感じている人ばかりです。そして利用者の中には、リウマチを患っていたり、片麻痺やパーキンソン病、椎体(ついたい)圧迫骨折などの疾患や障害を持っている人も少なくなく、これからますます増えると考えられます。
ホームヘルパーの役割は、介護が必要になった人が自宅で安心して暮らせるよう、適切なサービスを提供することですが、果たしてこうした疾患や障害を持っている利用者に即した介助・介護ができているでしょうか。
「当たり前ですが、麻痺の程度、関節の痛み、筋力の低下などは一人ひとり異なっています。それぞれの疾病の特徴を理解して、症状に合わせた介助をすることで、はじめて利用者の役に立つ支援になるわけです」と、理学療法士で介助技術の向上と普及に努めている田中義行先生は、利用者の症状に合わせた介助の重要性を強調します。
利用者の不自由さを理解する
介助術には、すべて根拠があります。たとえばベッドからの起き上がりでも、片麻痺のある利用者と椎体圧迫骨折の利用者では、介助の方法が違います。
関節リウマチの利用者の介助は、ほとんどのホームヘルパーが経験しているのではないでしょうか。そのとき、どのような介助を行いましたか?関節リウマチは負担がかかると関節や骨が徐々に破壊されていく疾患で、フライパンを持ったり、マグカップを持ったりするだけで、関節や骨が壊れて変形していきます。関節リウマチの人には、利用者ができるだけ指先を使わないように介助します。ところがホームヘルパーの中には、「自立支援」のためだからと料理を一緒に作ったり、洗濯物をたたんだり、拭き掃除をするようにリードする人が少なくありません。これは知識不足です。
このように特性を理解しないまま介助を行えば、よかれと思ってしていたことが、後々、身体状態の悪化を引き起こしてしまうことにもなりかねません。
介助の基本になる疾患や障害に対する知識、そして基本的な介助術を身に付け、さらに想像力を働かせて介助される人の気持ちが理解できるようになったときに、最もよい介助サービスが提供できるのです。