「“虐待かもしれない”と感じたら通報や相談をしなければならない」と頭では理解していても、いざその現場に遭遇すると誰しも躊躇してしまいます。『へるぱる』の読者からも「実際に虐待と思われる場面を見ると戸惑ってしまう」「どのタイミングで通報すればいいか迷う」という声が多く寄せられました。虐待は、精神的な問題、複雑な人間関係、経済的な問題、孤立、介護疲れ、ストレスなど様々な要因が複雑に入り組んでいますから、ホームヘルパーが1人で判断する必要はありません。どうすればいいのか、研修を通して考えていきましょう。
なぜ躊躇してしまうのでしょう。例えば、「もう少し様子見して、確信してからでもいいかも」「間違いだったらどうしよう」「通報したのが私だとバレてしまったら」と思ってしまうのではないでしょうか。これは、実際に訪問介護職からあげられた、躊躇してしまう理由ですが「その心配はする必要がないので、ためらわないでください」と監修の川村先生。本誌ではその理由をわかりやすく解説していきます。
そうはいっても、迷ってしまうという方へ。今号のへるぱるでは、実例を基に5段階に分けて、場面ごとに、どう思うか、自分ならばどこの段階で相談するか、事業所内の皆で考えていけるようなワークショップのページを設けました。コロナ禍において、外から見えにくい虐待が増えているともいわれています。ぜひ、気づきのきっかけを事業所内のみなさんで考えていただければ、と思います。
監修/川村孝俊
一般社団法人 権利擁護支援プロジェクトともす代表理事。川村社会福祉士事務所代表。自治体で高齢者・障害者福祉に携わる。高齢者虐待対応や成年後見制度等の権利擁護支援に関する講演や研修もおこなう。認知症高齢者の後見人としても活動している。
イラスト/柴田やすか