まずは「一番困っていること」からスタート
そもそも、利用者や家族が介護サービスを望んでいるのは、生活するうえで何かしらの困難が生じたからです。「どんなことに一番困っていらっしゃいますか?」と話を切り出すのが自然で、話も弾みやすいでしょう。「腰が痛くて、掃除が大変なんです」といった返答があったら、「いつごろから痛みが出たんですか?」「これまではどうやって掃除していましたか?」と話を広げていき、心身の状態を具体的に把握していきます。
部屋の様子から気づけることも
会話のきっかけを部屋の中の様子からも探してみましょう。例えば、薬が机の上に無造作に置かれていたら、指導されたとおりに管理・服薬できていないことが想像できます。「薬の種類がたくさんあって大変そうですね。1日にどのくらい飲むんですか?」「病院の先生や薬剤師さんはどんな方ですか?」などと質問すれば、自然に医療情報を聞き取ることにつなげられるでしょう。当事者が意識している悩みはもちろん、無意識のうちに困っていることを見出すきっかけになるかもしれません。
柴田範子(しばた・のりこ)
NPO法人「楽」理事長として、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」、サテライト「くじら雲」を運営する。神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会委員。元・東洋大学ライフデザイン学部准教授。『イラストでわかる介護職のためのきちんとした言葉のかけ方・話の聞き方』など、著書も多数。イラスト/仲野みどり