車いすの基本的な考え方は「身体機能や身体の大きさ、生活に合わせて選択し、調整する」です。しかし高齢者の座っている姿を見ると、その視点で選ばれていない現実を目にすることがあります。座骨が前に滑っていたり身体が横に傾いていたり、崩れた姿勢で車いすに座っている利用者の何と多いことか。姿勢が崩れた状態で車いすに座り続けることは、自分の足に合わない靴を履くことと同じくらい苦痛なことなのです。それなのに、その苦痛に対して文句を言わず座っている利用者は「自分の身体が悪いからこの苦しみがある」と思っているのではないでしょうか? 悪いのは身体に合っていない車いすの方なのです。介護職も車いすの基本的な知識を持って関わって欲しいと思います。
今回は「座り姿勢が崩れていないか」の観察から始めて、座り直しの方法などを詳しく解説します。また、姿勢変換型車いすに替えた利用者の変化、クッションを替えて座り姿勢が改善された利用者の姿、を写真で丁寧に解説。ぜひ、本誌で確かめてご活用ください。
監修/市川 洌
早稲田大学理工学部卒業。東京都補装具研究所、東京都福祉機器総合センターで福祉機器の研究等に従事したのち福祉技術研究所株式会社を設立。高齢者・障害者に対する各種福祉用具支援やコンサルティング、福祉関連従事者に対する福祉用具支援を中心とした講習会・講演等を積極的におこなっている。著書に『ひとりひとりの福祉用具─福祉用具支援概論─』(日本工業出版)、『滑らせる介助の技術 スライディングシート・トランスファーボードの使い方』(中央法規出版)など多数。
イラスト/藤田侑巳