最後に、より優れた接遇を目指すうえで外せない、1人ひとりに合わせた支援について触れます。この考え方を忘れずに、利用者と向き合うことを期待しています。
どのような対応がよいか、利用者に聞くことも大切
「介助に関すること以外、利用者さんに聞くのは失礼」と思っているホームヘルパーが意外と多いものです。でも、決して失礼なことではありません。むしろ確認することで、すんなり解決することがあります。
たとえば、話をするときの距離・目線の高さについてであれば、「私と話をしていて、おつらいところはないですか?」など、利用者が不快に感じず、答えやすい聞き方をしましょう。
パーソナルスペースに踏み込む必要がある場合も、「お隣よろしいですか?」「○○を確認したいので、お近くに座っても構いませんか?」など、一言聞くだけで、利用者との信頼関係が深まるものです。
マナーに縛られすぎず、利用者の表情、状態で判断を
本誌20~21ページのワークショップを体験した後、どのような意見が出ましたか?「全員同じ感想だった」という事業所もあるかもしれませんが、一般的には意見が異なることが多いようです。
「Aさんの場合は距離が近いほうが話しやすい」「Bさんは下から話しかけてくれたほうがよかった」など、相手によって心地よいと感じる距離と目線の高さが変わる人も多いもの。お互いの関係性、身長差、体格、性別など、さまざまなことが影響します。
それは利用者でも同じです。しかも大半の利用者は病気を抱えているため、その症状や状態によっては、上から見られるほうがラクな場合もあるでしょう。利用者の表情を見ながら必要に応じて接することも、介護のプロである私たちには求められています。
本誌では接遇研修を振り返る研修ノートを掲載していますので、最後のまとめにご活用ください。
監修/柏瀬美奈子
ヒューマンライフケア株式会社・人事部 育成担当 ジュニアマネジャー。介護福祉士。施設介護、通所介護、訪問介護などの職を経て、人材育成、資格講座の講師を担当。2013年より現職に就き、研修企画、業務開発などに従事。これから「介護」を目指す人の熱い想いを支え、その教育・研修を提供することで、地域・社会への貢献を果たしている。取材/坂口みずき イラスト/Kuma*Kuma