どうして、高齢者にこれほど熱中症の被害が多いのか ――。それは、加齢によって体が脱水症を起こしやすい状態に変化していたり、脱水症を招きやすい生活習慣だったりするから。その理由を詳しく見ていきましょう。
筋肉量が減って体内に水分をためられないから
そもそも水分は体のどこにあるかというと、細胞の中や血液の中(血液の半分以上は水分)です。そして血液がたくさん流れ、もっとも多くの体液を含んでいるのが筋肉。ところが、加齢や活動量の低下によって、高齢者は筋肉量が減ります。「水分をためておく場所である筋肉量が減る」ため、脱水症を起こしやすくなるのです。
感覚が鈍くなり、のどの渇きを感じにくくなるから
目が見えにくくなる、耳が遠くなるように、一般的に年齢を重ねると、体の様々な機能や感覚が低下していきます。のどの渇きを感じる感覚も例外ではありません。そのため本当は水分が必要なほど体は渇いているのに、のどの渇きを感じにくく、水分補給を怠ってしまうのです。
腎臓の働きが低下して、水分量をうまく調節できないから
臓には体内の水分量をコントロールする働きがあります。ところが、加齢や糖尿病などの病気により、腎臓の働きが低下すると、水分や電解質が失われて脱水症になるリスクが高まります。
本誌では高齢者に多い病気と脱水症との関係なども含めて詳しく解説しています。
監修/秋山正子
株式会社ケアーズ 代表取締役・白十字訪問看護ステーション 統括所長。NPO法人 白十字在宅ボランティアの会 理事長。認定NPO法人マギーズ東京 共同代表理事兼センター長。気軽に立ち寄って相談できる「暮らしの保健室」室長。「教えて!『かくれ脱水』委員会」委員などを務める。取材・文/植田晴美 イラスト/西脇けい子