介護現場でもっとも頻繁に起こり、問題になる事故が、転倒です。環境面の改善やケアの工夫など、さまざまな対策が考えられますが、忘れてはならないのが「同じ転倒でも、100人の利用者がいたら100通りの意味がある」ということ。どの利用者へも一律に「とにかく転ばせない」ことだけを考えた対応をすることが、必ずしも正しいとは限らないのです。
例えば、一度でも転倒すれば寝たきりの状態になることが懸念される、あるいは直接的に命に関わる利用者もいるでしょう。歩けるという自信の喪失が本人に大きなダメージを与えたり、介護を続けてきた家族の精神面に影響したりすることも考えられます。一方で、利用者の状態や考え方によっては、転倒をおそれすぎず、むしろ自由に動けることを重視すべきケースも考えられます。
その人にとって転倒がどんな意味を持つかを考え、話し合って理解し、それによる不利益を防ぐための対策を取ることが重要です。
分析の視点
転倒は予見できるものだったか?
予見できるものであれば、対策を立てて介護計画に反映していた?
転倒したときはどんな状態だったか?
- どんな動作をしていた?
- 発見時の体の位置や姿勢は?
- 転倒した場所や環境は?
- ホームヘルパーはどのように関わっていた?
本誌ではさらに詳しい分析視点のほか、事例をもとにしたワークショップも掲載しています。
監修/倉井千恵
セコム医療システム株式会社 ケアサービス部課長。看護師、ケアマネージャー。1998年に入社。訪問看護、訪問介護、ケアマネジャーの実務を経て、現職。在宅介護を展開する部署で、おもに組織作り、人材の育成を担当。イラスト/みやれいこ