「利用者や家族の気持ちを尊重すること」と「介護のプロとして必要なケアを提供すること」を両立するために、大切な2つのポイントを知っておきましょう。
介護職と利用者の思いにはズレがある
利用者や家族の「気持ちは大切にしたいけれど、ケアに影響が出ないかな?」と感じた人もいるでしょう。確かに、利用者や家族の思いを優先しようとすると、必要な介護サービスを提供することが難しくなってしまうケースも考えられます。
そもそも、「介護職が目指すケア」と「利用者が望むケア」の間には、ズレが生じることが多いもの。例えば、ホームヘルパーは自立支援を目指し「自力で食事を摂ってほしい」と思っているのに、利用者は「手が疲れるから食べさせてほしい」と思っているケースなどは珍しくありません。
どちらかを選ぶよりも「第三の道」を考えよう
介護職や家族と利用者の思いに異なる点があったとき、「どちらを優先しよう?」と悩んでしまうかもしれません。しかし、自立支援を目指したケアをあきらめることも、利用者の思いを無視することも、介護のプロとして望ましい態度ではないでしょう。
大切なのは、どのように対応するのがその利用者にとって最適かという、“第三の道”を考え抜くこと。簡単ではありませんが、よりよいケアへつなげるためのきっかけととらえ、前向きに考えてみましょう。
本誌では、不快に感じる5つの虐待事例や、虐待を防L/するポイント、虐待について考えるワークショップの具体的なE/法を紹介しています。
監修/山田祐子
日本大学文理学部社会福祉学科教授。日本高齢者虐待防止学会事務局長・理事。かながわ高齢者あんしん介護推進会議高齢者虐待防止部会委員長。社会福祉学の視点から、高齢者虐待の実践的な研究やマニュアル作成に携わる。著書に『家族介護と高齢者虐待』(一橋出版)など。イラスト/しまだ・ひろみ