悪気なしに漏えいしてしまうことも多い「個人情報」。実際の例を見ながら、利用者・利用者家族・事業所の個人情報の守り方を学びましょう。
介護サービスで知り得た事柄はすべて個人情報
事例1
Aさんは歩行困難で訪問介護サービスを受けている、しっかり者で世話好きな利用者。ある日ホームヘルパーのBさんがAさん宅に行くと、「ご近所のCさんもあなたが担当しているんですって?」「Cさんはどんなサービスを受けてるの?」「最近見かけないけど元気かしら」など、世間話の延長で他の利用者のことを聞かれました。Cさん本人が介護サービスを利用していることを話しているようなので、“元気かどうか”くらいの情報なら伝えてもよいのか、迷いました。
考え方
介護サービスを通して知り得た情報は、すべてが「個人情報」です。利用者に関する情報はどんなに小さなことでも、決して口外しないようにしましょう。親しい人から聞かれても、「事業所から他の利用者のことは話さないように言われているので…」と、「事業所の方針で伝えられない」ことを説明しましょう。それでも聞かれたら「すみませんが、事業所に直接問い合わせてもらえますか?」と伝え、決して口外しないようにします。そうすることが、利用者にとっては結果的に「自分の情報も他では話されていない」という安心感にもつながります。
事業所の愚痴や悪口も「情報漏えい」
事例2
ホームヘルパーのDさんは、勤務形態のことで事業所に不満を持っていました。仲の良い利用者Eさんのお宅に行ったとき、「勝手にシフトを増やされて困る」などと事業所に関する愚痴を思わず漏らしてしまうことに。最初は何も言わずに聞いていたEさんも、「それはひどい。私から会社に言ってあげる!」と正義感を刺激され、Dさんが知らない間に会社に連絡をして問題になってしまいました。
考え方
事業所の不満や悪口、仕事の愚痴などを、利用者の前で話すのはタブーです。利用者から家族、ご近所や友人たちにまで噂が広まってしまえば、ヘルパー自身の人柄も疑われることになり、事業所はお客様の信用をなくしてしまいます。事業所内部の情報だから「個人情報とは違う」と考えていると、いずれは個人の情報を漏らすことにもなりかねません。利用者の情報のみならず、事業所の情報もしっかり守りましょう。
監修/松田吉時
介護福祉士、介護支援専門員。株式会社ケアリッツ・アンド・パートナーズ 取締役副社長。2009年にケアリッツ・アンド・パートナーズに参画。訪問介護事業所を新設してヘルパー業務や管理者業務等に従事後、現在は社員研修、社内監査等を担当。
文/元井朋子 イラスト/しまだ・ひろみ