本年度の介護報酬改定において、訪問介護の運営基準に、図のような内容が新たに追加されました。
ケアマネジャーは図にあるような報告を受けた場合、必要に応じて主治の医師や歯科医師、薬剤師等に情報提供することになります。ですから、たとえ服薬介助や口腔ケア以外の支援で訪問した場合でも 、今後は特にこの2点について、注意して見ていく必要があります。
では、この2点の重要性をあらためて見ていきましょう。まずは「服薬状況 」です。大半の高齢者は薬を飲んでいます。さらに、複数の病院や診療科にかかっている多科受診の人も大勢います。各診療科から薬が出されると、結果的に多量の薬を飲むことになります。もちろん、医師が処方した薬であれば、その通り正しく服用することが重要ですが、なかには自分で飲む薬を選別したり、飲んだつもりで忘れていたり、飲む際に薬をこぼしていたり、同じ効能の薬を複数飲んでいる人もいます。大半の薬には副作用があるため、正しく処方され、適切に服用することが望ましいのですが、高齢者が自己管理するのは難しい場合が多いのです。そのため、自宅において身近な存在であるホームヘルパーが、これらの状況を発見できる立場にあるとされ、新たに基準に加えられました。
そして「口腔機能 」は、「食べること」「話すこと」において重要な役割を持ちます。口の中にトラブルを抱えると、健康維持に必要な栄養を十分に摂取できなくなります。また、歯の欠損などで見た目を気にし、引きこもりがちになることもあります。廃用症候群や生活不活発病は、栄養低下や引きこもりが原因ともいわれています。つまり、口の中にトラブルを抱えたことで起こる場合が非常に多いのです。口腔状態は要介護状態を引き起こす“根幹的原因”ともいえるため、特に注意を要します。
監修・執筆/能本守康
介護福祉士、主任介護支援専門員、相談支援専門員、日本ケアマネジメント学会認定ケアマネジャー、日本介護支援専門員協会常任理事、(株)ケアファクトリー代表取締役などを務める。著書に『Q&A訪問介護サービスのグレーゾーン改訂版』(ぎょうせい)などがある。