なかなか書く時間がとれないと思われがちな自由記述欄ですが、要点を押さえることで、定められたサービス時間内でも、効率的かつ的確に記録を残すことができます。
[1]ニーズを理解してからケアを実践する
サービス提供後、記録にかけられる時間はわずかなもの。いざ用紙を前にしてから何を書こうかと考えても、漠然とした内容になりがちです。大切なのは、その利用者のケアプランや訪問介護計画書をしっかり理解し、ニーズを把握してからサービスに入ること。そうすれば、「今日の声かけに対する反応はどうだったか?」「先週と比べて体の痛みはどう変化したか?」といった的確なケアの視点を持つことができ、自然と意義のある記録につながっていきます。できればサービス中にも、どんなことを記録に残すか頭の片隅で考えておき、忘れてしまいそうなことはサッとメモをとれるとよいですね。
[2]具体的かつ客観的な文章にする
個人的な日記とは異なり、サービス提供記録ではあくまでも客観的な事実を記録することが求められます。「〇mLの白湯(さゆ)を飲んだ」「14時にA剤を服用」「△△ストアで買い物」といったように、数値や時間、固有名詞などを具体的に書くようにしましょう。また、利用者の様子を描写するときには、かぎかっこを使って発言を切り取るようにするのがお勧め。例えば、「おいしそうにおじやを食べきった」とだけ書くよりも、「にこやかな表情で『この味つけが好きなのよね』とおじやを全量摂取した」とするほうが、利用者の様子をダイレクトに伝えることができるはずです。
[3]出来事への「対応」と「結果」を書く
ある出来事を記録したら、それについての対応と結果を忘れずに書くようにしましょう。「腹痛の訴えあり」とだけ書き残されていたら、利用者に対して何もせずに放置したと誤解されてしまうかもしれません。「軽い腹痛の訴えがあったので、湯たんぽで温めながら横になってもらう。30分後に排便があり、痛みはなくなったとのこと」といったように、ホームヘルパーがプロとして行った対応と、その結果どうなったかまで明らかにしておくことが重要です。
柴田範子(しばた・のりこ)
NPO法人「楽」理事長として、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」、サテライト「くじら雲」を運営する。神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会委員。元・東洋大学ライフデザイン学部准教授。『イラストでわかる介護職のためのきちんとした言葉のかけ方・話の聞き方』など、著書も多数。イラスト/仲野ひかる