身につけた知識は、実際に緊急時で活かせてこそ意味があります。そこで必要となるのが以下の6つの力。利用者と接する際、意識しながらケアにあたり、力を高めていきましょう。
観察力
すべてのケアの基本であり、もっとも重要なのが利用者を観察することです。会話や介助をしながら、顔色、表情、声のトーンなど、普段と違うところはないか注意をはらいましょう。また、異変の兆候は暮らしのなかにも隠れています。部屋の様子なども注意して観察しましょう。
直観力
「なんとなくいつもと違う気がする」「ほんの少し受け答えが遅い」など、些細な変化を敏感に察することができれば、早期発見できます。
推理力
何かしらの変化に気づいたとき、いつもとどこがどう違っているかを考え、持病や薬の副作用など、利用者の情報と照らし合わせて原因を推理することが必要です。普段のケアでも、利用者が「〇〇したがらない」場面に遭遇したら、理由や相手の気持ちを推理して、力を磨きましょう。
判断力
推理した情報をもとに、次にどう動くべきかを判断することも重要です。冷静さを失わずに行動することが求められます。
決断力
いざというとき、意外に難しいのが決断すること。特に「救急車を呼ぶかどうか」は、気持ちの焦りもあり迷う人が多いものですが、症状が急変することもあるので、思い切りが必要です。「意識レベルの低下があれば即座に呼ぶ」など、事業所のマニュアルも頭に入れ、医療職につなげましょう。
コミュニケーションカ
訪問介護は日頃のコミュニケーションがあってこそ。利用者、そしてご家族と良好な関係が築けていれば、具合が悪いときや心配事がある場合、事前に話してくれ、こちらの質問にも答えてくれるでしょう。その時点で気づくことができれば、大事に至る前に回避でき、万が一、緊急事態に陥ったときも、被害を最小限におさえることができる可能性があります。
監修/橋村あゆみ
特別養護老人ホーム 川口キングス・ガーデン 施設長。看護師として病院勤務を経て、専門学校で介護福祉士の教育、ケアマネジャーなどを経験。2007年より川口キングス・ガーデンにて看護主任として勤務、2014年、現職に。著書に『三訂版 緊急時の介護 ~とっさの症例判断・対応マニュアル~』などがある。取材・文/坂口みずき イラスト/さいとうかこ