利用者のお宅に伺い、いざサービスをはじめようとしても、「お風呂なんて入りたくないわ」「トイレ?まだいい」などと言われて困ってしまった……。そんな経験ありませんか?実際にそうした事態に陥ったとき、解決につながった対応法を訪問介護職の皆さんから教えてもらいました。介助の際、参考にしてみてください。
自分が利用者の立場ならどう思うか、まずは想像しよう
入浴や排泄介助をしようと懸命に声かけしても、なかなか応じてもらえないと、困ったり焦ったりしてしまいますよね。そのような場合、こう考えてみてはいかがでしょうか。
「もし、自分が利用者の立場なら、どんな気持ちになるだろう?」
その気になれないのに、自分のペースを無視して、無理やり排泄や入浴、食事などを急かされる、しかも、しつこく何度も……と、思ってしまうかもしれません。ある意味、土足で家に踏み込まれるような気持ちになるのではないでしょうか。
そうであれば、声をかけるタイミングや言葉使い、声の大きさ、声のトーンなどを振り返り、工夫をしてみましょう。解決への一歩が見つかるかもしれません。
重要なのは「利用者自身がどういう暮らしを望んでいるのか」
本人は困っていると感じていないのに、家族や周囲の人から「室内が散らかり、転倒の危険がある」「食事がとれていないようだ」などと心配され、利用者自身の承諾は曖昧なまま、サービスがはじまる……というケースが実際には少なくありません。これでは、利用者の立場からすると、「勝手に何なの!」と、気分を害することがあっても当然でしょう。
自立支援の観点からも、介護者側の視点ではなく、本人が望む生活に合わせた支援が一番です。
とはいえ、危険が伴うのであればサポートが必要です。その場合、顔を合わせる機会の多い訪問介護職が、時間をかけて信頼関係を築き、本人から「〇〇したい」という言葉や心
の底にある思いを引き出す努力が必要となります。
※『へるぱる2018 11・12月』では利用者の気持ちを考えてワークショップの具体的な方法を紹介しています。
監修/柴田範子
NPO法人「楽」理事長として、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」、サテライト「くじら雲」を運営。神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会委員。元・東洋大学ライフデザイン学部准教授。『イラストでわかる介護職のためのきちんとした言葉のかけ方・話の聞き方』(成美堂出版)など、著書も多数。取材・文/寺尾まり イラスト/さいとうかこみ