介護現場における事故原因は、大きく3つの視点にわけられます。具体的にどういうことなのか、訪問介護の現場に落とし込んで見ていきましょう。
介護職側のリスク
ホームヘルパーなど、実際に介護を行う者の技術や心身の状態、その日の利用者に適さない介護方法・手順、事前準備の甘さなどに起因する危険性。ケアに関する知識不足だけでなく、前回の申し送りが不足していたり、利用者への理解が不十分という場合も含む。
【例】
- 睡眠不足で集中力が低下していた
- 十分な声かけを行わなかった(声が小さかった)
- 嚥下機能の低下した利用者の座位姿勢を整えず介助した
- 事業所の緊急時マニュアルを把握しておらず、利用者の急変時、対応が遅れた
利用者側のリスク
利用者自身の特性や健康状態及び生活習慣にまつわる危険性。具体的には、ADLやIADL、疾患や怪我などの状態、認知機能、精神状態、これまでの生活歴、家庭の事情などに潜むリスクを指す。その日に服用した薬の影響なども、このリスクに分類される。
【例】
- いつもより血圧が低い状態だった
- 嚥下機能が以前よりも低下していた
- 昼夜逆転の生活により、昼間うとうとしがちだった
- パーキンソン症状があり、その日は特に小刻み歩行だった
- 筋力の低下により、立位が保てなくなってきた
※本誌では「環境面」とあわせて3つの視点をご紹介しています。
監修/岩永美穂
東京海上日動ベターライフサービス株式会社 ソリューション事業部 専門部長。社会福祉士、ケアマネジャー。訪問介護、居宅介護支援を運営している同社において、ホームヘルパー、サービス提供責任者等の研修体系の構築・社内講師の育成を担当後、現在は自社で構築したノウハウをもとに、介護サービス事業者向けのセミナー講師として全国で活躍中。取材・文/ナレッジリング(中澤仁美)