まず、こう考えよう!
入浴介助は“困った”に直面することが多い、難しいサービスのひとつ。まずは入りたがらない理由を探りましょう。「人前で裸になりたくない」「疲れる」「入浴しなくても清潔にしている」「浴室が寒い」など、いろいろあるはずです。焦らず原因を見つけ、ひとつひとつ解決していくことが大切です。
- 衣服を脱いで裸になるのは、信頼できる人の前でこその行為。まずは信頼関係を築くことからはじめる。
- 昔は1週間に1回、あるいは、1カ月に1~2回の入浴が普通だった人も。利用者の生活習慣の確認を。
- 「お風呂は寝る前に入るもの。昼間から入るなんて」と思う気持ちを理解すること。
- 「入浴」「お風呂」という言葉自体に抵抗感を示す場合、それ以外の言葉を使って誘導を。
うまくいった対応法
「病院に行く前にお体をきれいにしませんか」
外出やご家族などの訪問は絶好のチャンス!「さっぱりしてから、お嬢さんにお会いになりませんか?」「お孫さんが遊びにいらっしゃるので」等々。予定に合わせて入浴を勧めると、入ってくださる確率が高いです。(訪問介護歴8年・30代)
【ポイント】
大切な人に会う、自分の元気な姿を見せる、公的な場所に出かける……といった場合、身だしなみを気にする人が多いものです。高齢になっても、認知症の人でも、その心理は同じです。とはいえ、ホームヘルパーが嘘の予定を勝手に作って勧めることはやめましょう。
「今日のお湯はバラの香りです」「お風呂場も脱衣場も温かくしておきました」
「なんとなく億劫」「寒いから嫌」といった理由なら、ご本人の好きな香りの入浴剤をご家族に準備してもらったり、前もって浴室や脱衣場を温めてから声かけしています。(訪問介護歴8年・40代)
【ポイント】
利用者の好みなどを探り、環境を整えるのはとてもよい対応です。「温泉好きで、大浴場だと進んで入る」という人もいます。その場合は自宅に固執せず、デイサービスなどでの入浴を提案するとよいでしょう。
『へるぱる2018 11・12月』ではうまくいった対応法をこの他にも紹介しています。
監修/柴田範子
NPO法人「楽」理事長として、小規模多機能型居宅介護「ひつじ雲」、サテライト「くじら雲」を運営。神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会委員。元・東洋大学ライフデザイン学部准教授。『イラストでわかる介護職のためのきちんとした言葉のかけ方・話の聞き方』(成美堂出版)など、著書も多数。取材・文/寺尾まり イラスト/さいとうかこみ