「高齢者虐待防止法」による虐待のとらえ方
全国規模での虐待への対応・予防活動は、2006年に通称「高齢者虐待防止法」が施行されたことにより始まりました。
この法律の特徴は、高齢者だけでなく介護する側の家族や介護職への支援も重視していること。つまり、虐待した人を責めるのではなく、そのような状況に陥ってしまった背景を理解し、包括的に支援するための法律です。
また、虐待の定義について「意図の有無を問わない」と解釈されているのも大きな特徴。本人にそのつもりがなかったとしても、虐待であると判断される可能性は十分にあるということです。
相談・通報件数が急増する背景には……
高齢者虐待の数は年々増加傾向にあり、2017年度には養介護施設従事者等※による虐待の相談・通報件数は1,898件、このうち510件が虐待と判断されました。
虐待件数の増加にはマイナスの印象がありますが、相談や通報の件数が増加したことにはプラスの側面もあります。「虐待に関する知識が普及し、積極的に介入・対応しようとする人が増えた」という考え方もできるからです。この背景として、多くの自治体等が虐待防止の制度を改善し、現場の声が届きやすくなったことが挙げられるでしょう。
訪問介護事業所においてもスタッフが一丸となり、より望ましい体制を作り上げていくことが大切なのです。
※養介護施設または養介護事業の業務に従事する人のこと。
本誌では、研修で話し合いたい具体的な事例やケアのポイントも紹介しています。
監修/山田祐子
日本大学文理学部社会福祉学科教授。日本高齢者虐待防止学会事務局長・理事。かながわ高齢者あんしん介護推進会議高齢者虐待防止部会委員長。社会福祉学の視点から、高齢者虐待の実践的な研究やマニュアル作成に携わる。著書に『家族介護と高齢者虐待』(一橋出版)など。