利用者が虐待を受けるケースだけでなく、ホームヘルパーが利用者やその家族などから虐待を受ける場合についても、解決のために事業所一丸となって取り組むことが大切です。
「我慢すればいい」で終わらせるのはNG
介護現場では、利用者や家族からホームヘルパーが虐待を受けるというケースが少なからず存在します。「我慢すればいい」「このくらいはしょうがない」とみなされがちですが、利用者と同じように、ホームヘルパーの尊厳を守ることは非常に重要です。もし事態を放置すれば、被害を受けたストレスが利用者に向かったり、疲れ果てて離職につながったりする可能性もあります。
特に、利用者宅へ一人で訪れることの多いホームヘルパーについては、管理者や同僚が被害に気づくのが難しいもの。だからこそ、不快な思いや怖い思いをしたホームヘルパーが、迷わず相談できるような職場づくりが大切なのです。
事業所として解決する課題だと考えよう
虐待の事実がわかったとき、「被害を受けた個人だけの問題」と考えたり、そのホームヘルパーを責めたりするのはやめましょう。虐待の原因が、その人だけの責任ということはあり得ません。むしろ、事業所全体で対応すべき課題としてとらえ、チームで解決を図る必要があります。
高齢者への虐待を防ぐときと同じように、ケアプランに立ち返って、さまざまな角度から議論を重ねていきましょう。また、ホームヘルパーがどのような支援を望んでいるか、事業所として把握することも大切です。
本誌では、虐待防⽌のためのコピーして使える研修ノートを掲載していますのでご活⽤ください。
監修/⼭⽥祐⼦
⽇本⼤学⽂理学部社会福祉学科教授。⽇本⾼齢者虐待防⽌学会事務局⻑・理事。かながわ⾼齢者あんしん介護推進会議⾼齢者虐待防⽌部会委員⻑。社会福祉学の視点から、⾼齢者虐待の実践的な研究やマニュアル作成に携わる。著書に『家族介護と⾼齢者虐待』(⼀橋出版)など。
イラスト/しまだ・ひろみ