認知症の原因には何があるのか、病気という視点で認知症について改めて考えてみましょう。
認知症の原因
1 変性疾患
アルツハイマー病、レビー小体病、ピック病などの病気によるもの。
- アルツハイマー型認知症
新しい記憶をためる海馬から神経細胞が壊れるため、初期の段階から記憶障害が現れる。
- レビー小体型認知症
特殊なたんぱく質が中枢神経系と自律神経系にたまって、神経細胞が徐々に壊れていく。幻視や妄想から始まることが多く、パーキンソン症状や自律神経症状が現れる。
- 前頭側頭型認知症
抑制機能を持つ脳の前頭葉から縮んでいくため、抑制が外れたり、同じ行動を繰り返したり、意欲の低下が起こったりする。側頭葉が萎縮すると言語に障害をきたすことがある。
2 脳血管障害
脳梗塞や脳出血により起こる。
- 血管性認知症
麻痺など身体の障害が起こる。言葉の理解や行動が遅くなり、やる気がなくなる。わずかな刺激でも感情が表出し、コントロールできなくなる“感情失禁”がみられることがある。
3 その他
- 正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、甲状腺機能低下症、低酸素症、ビタミン欠乏症、電解質異常
正常圧水頭症は脳脊髄液の流れが悪くなり、歩行障害、失禁に加え認知症がみられる。慢性硬膜下血腫は頭を打った後に、内部で少しずつ出血することで起こる。これらは「治療によって治る認知症」と呼ばれる。
認知力を低下させる原因
認知力は様々なことをきっかけに低下していきます。改めて確認しておきましょう。
本誌では、利⽤者の気持ちや不安の原因を想像するうえで重要なヒントとなる認知症の症状別に起こりやすいことについても紹介しています。
監修/北⽥信⼀
看護師。介護⽀援専⾨員。東京都⽴⼤塚看護専⾨学校卒業。精神科病院病棟看護師⻑、看護専⾨学校専任教員、介護福祉⼠養成施設専任教員(教務課⻑)を経て現在、認知症対応型グループホームPAO経堂、デイサービスPAOすがも運営の傍ら、訪問看護ステーションNew Step練⾺で訪問看護に携わる。教員時代より⽇本社会事業⼤学介護技術講習会主任指導者を務めるなど、介護技術教育にかかわる。