すぐに身に付けることが難しい倫理観だからこそ、ポイントを踏まえて継続的に学んだり、振り返ったりすることが大切です。
「人によって違う」からこそ具体的に学ぼう
6つの事例についての考え方を周囲と比較するなかで、自分とまったく異なる意見が出て驚いた人もいるかもしれません。絶対的な正解がない以上、倫理的な問題への考え方に個人差が生じるのは当たり前。倫理観は、これまで置かれていた環境や、様々な経験によって異なるため、年齢や生活歴などによって大きな違いが出やすいと言えます。
だからこそ、教科書的に学ぶだけでは、正しい倫理観を伴った行動につなげるのが難しいのです。そこで「どのような行為が倫理に反するか」を具体的に知るために、たくさんの事例に触れましょう。「私はこう思ったけど、みんなと全然違う」「やっぱり同じ考えだった」など、いろいろな意見を聞くことで、倫理観を養うことができるでしょう。
自分から報告・相談することを忘れずに
実際の現場に出ると、思わぬ場面で対応に困ることもあるでしょう。他者の目が入りづらい訪問介護では、誰かが気付いてアドバイスするのも難しく、迷いが生じがちです。そこで大切なのが、困ったり迷ったりしたことがあったら、できるだけ早く報告・相談をすることです。
自分の行動が適切だったかどうか不安が残るときはもちろん、少しでも気になることがあれば、「今日、こんなことがあったのですが……」と事業所でサービス提供責任者などに話してみましょう。場合によっては、訪問先から事業所に連絡して判断を仰ぐことも必要です。より多くの目でひとつの出来事を検討し、指摘し合うことで、正しい倫理観に基づいたサービスを提供できます。
本誌では、ホームヘルパーに求められる倫理観について事例を通して考えるための資料や、考え⽅のヒントも紹介しています。
監修/⼭⽥ 滋
株式会社安全な介護 代表取締役。おもにリスクマネジメントをテーマに、年間150回のセミナーをおこなう。『完全図解 介護リスクマネジメント』(講談社)など、著書も多数。
取材・⽂/ナレッジリング(中澤仁美) イラスト/⻫藤かこみ