症状への理解は、利用者の気持ちや不安の原因を想像するうえでとても重要なヒントとなります。改めて確認しておきましょう。
中核症状の例
現れる時期や程度の違いはあるが、すべての認知症にみられる症状。1つ1つの症状について理解しておこう。
記憶障害
単なる「もの忘れ」ではなく、「覚えられない」という記銘力障害が起こる。脳の記憶装置をレコーダーとするなら録音ができない状態。最近の記憶だけでなく、次第に過去の記憶も薄れていく。
起こりやすいこと
- 同じことを何度も言う
- いつも探し物をしている
- 食べたことを忘れる
見当識障害
今日が何日なのか、何曜日なのか、またどこにいるのかなど時間や場所がわからなくなったり、人との関係もわからなくなる。状況が理解できなくなり、日常生活やコミュニケーションが困難になる。
起こりやすいこと
- 自宅にいるのに帰ると言う
- 人物を間違える
- よく使うトイレの場所がわからなくなる
BPSD(行動・心理症状)
ストレスが要因で起こる症状で心理症状と行動症状がある。人によって出たり、出なかったり、また個人によって現れ方も変わってくる。BPSDの症状がなぜ起こっているのか? 利用者はどんな気持ちなのか? を想像してケアをする必要がある。BPSDの背景には必ず何らかの中核症状があることを知っておこう。
心理症状
- 不安
- 焦燥
- 無気力
- 抑うつ
- 幻覚
- 妄想
行動症状
- 睡眠障害
- 徘徊
- 介護拒否
- 暴言・暴力
- 過食・異食
- 不潔行為
本誌では、このほか5つの中核症状について解説し、心理症状や行動症状が起こった場合、どのように症状を想像して対処するかも紹介しています。
監修/北田信一
看護師。介護支援専門員。東京都立大塚看護専門学校卒業。精神科病院病棟看護師長、看護専門学校専任教員、介護福祉士養成施設専任教員(教務課長)を経て現在、認知症対応型グループホームPAO経堂、デイサービスPAOすがも運営の傍ら、訪問看護ステーションNew Step練馬で訪問看護に携わる。教員時代より日本社会事業大学介護技術講習会主任指導者を務めるなど、介護技術教育にかかわる。イラスト/しまだ・ひろみ