看取りケアにおいて様々な場面で必要となる「聴く力」について、具体的に紹介します。「聴く力」は生まれ持った才能ではなく、理論を学び、練習することで、身につけることが可能です。
「聴く」ための基本姿勢
まずは、皆さんが利用者からみて安心して話せる相手であると思ってもらえることが対話の始まりです。安心して話せる相手というのは、話を聴いてくれそうな雰囲気、忙しそうにしていないことが最初の入り口で、さらに話の内容を否定しない、評価しない、話に割り込まない、早合点しないなどいくつかの要素があります。
利用者が死についての話題やつらい気持ちを話し始めたとき、逃げ出したい気持ちになるかもしれません。しかし、そこから逃げずに話を聴き続けるには、その利用者がどんな気持ちでいるのだろう? と考えてみましょう。どんな場面でも、その人の気持ちを理解するためには、よりよい聴き方を知る必要があります。
大切なことは、“心を真っ白にして聴くこと”。自分の価値観とは異なっていても、そのまま肯定的に受け止めます。また、相手に関心を持ち、ほんの少し踏み込んで問いかけることも大切です。話したいと思ってくれればどんどん話をしてくれます。話したくないようなら無理に聴き出そうとしないことも大切です。利用者がどんな思いでいるかを感じながら合わせてみましょう。
本誌では、ミラーリング法のポイントや「聴く⼒」の⼤切さを体感する沈黙のゲームなども紹介しています。
監修/⼤井裕⼦
医学博⼠。社会福祉法⼈聖ヨハネ会桜町病院 在宅診療部⻑・ホスピス科常勤医師。広島⼤学医学部客員准教授。出⾝地である広島県で「はつかいち 暮らしと看取りのサポーター」代表としても活動。著書に『〈暮らしの中の看取り〉準備講座』( 中外医学社)がある。取材・⽂/ナレッジリング(中澤仁美) イラスト/中村知史