口腔ケアの重要性は十分に理解していると思います。でも、口腔機能の状態によって、どれほど日常生活に影響を及ぼすか把握していますか? この機会に押さえておきましょう。
きちんと食事が摂れないと体力が衰え、要介護度が上がる
低栄養をはじめ、不適切な食生活を続けることで、病気が重症化したり、要介護度が上がったりします。食べない・食べられない原因として、口腔機能の低下が発端となっているケースが多いと言われています。
食事によって必要な栄養を摂取できなければ、当然、体力や筋力が落ちます。すると、活動量が減少し、免疫力が落ちて病気にかかりやすくなったり、ケガをしやすくなったりします。
高齢者が転倒する原因のひとつに口腔機能も関連している!
本誌28ページで皆さんに体験してもらったように、“歯を食いしばっているとき”と、“歯を食いしばっていないとき”では、体を支える力に大きな差があることを実感したのではないでしょうか。
食いしばることができると、体のふらつきが少なく、転倒しにくいことがわかります。また、たとえ転倒したとしても、とっさに力が入れば、大きなケガには至らない可能性が高まります。
しかし、「歯がない」「入れ歯が合っていない」といった口腔トラブルを抱えていると、食いしばることができず、転倒の危険も増えます。その結果、骨折から、寝たきりにつながるケースが多いことは周知の通りでしょう。
【つまり】口腔状態が良好なら、よりよい日常生活を維持できる!
何気なくおこなっている、立ったり、座ったりといった日常生活の動作も、歯をぐっと食いしばって力を入れたほうが安定します。それは介護を必要としている利用者も同じです。
できるだけ現状を維持し、要介護度を上げないためにも、口腔内の健康を保つことは非常に重要です。介助する側にとっても、利用者自身に残っている機能が高ければ、少ない負担でサポートできます。
本誌では、ホームヘルパーに求められる⼝腔ケアや、⼝腔アセスメントシートなども紹介しています。
監修/城 明妙(しろ あけみ)
⻭科衛⽣⼠。デンタルサポート株式会社 ⻭科事業部ヘルスケア課。⻭科医院に勤めた後、⾼齢者・要介護者の在宅・施設・病院等での訪問⼝腔ケアなどに従事。現在はその経験を活かし、幅広い世代や⻭科衛⽣⼠養成学校での講師、多職種に向けた⼝腔保健セミナーを担当。イラスト/⽯⼭綾⼦