歯周病に限らず、高齢の利用者の多くは、歯や口腔内の健康に対して関心が低い傾向にあります。なぜなら、数十年前の日本では、今ほど口腔ケアの重要性が認識されておらず、社会的にも推し進めてこなかったという背景があるからです。また、高齢者のなかには、昔ながらの誤った口腔ケアを「正しい」と思い込んで実践している人もいます。
こうした利用者に対して、現在の常識やケア方法を押しつけないようにしましょう。「昔はそう教えられましたよね。でも今はこうなんですよ」など、利用者の立場に寄り添う声かけを心がけてください。
利用者の家族にも正しい知識を伝え、口腔ケアの重要性を理解してもらおう
残念ながら、利用者だけでなく、家族が口腔ケアの重要性を理解していないケースも多々あります。「もう80歳を過ぎてるし、1~2本、歯がなくても」「何とか食べてるし、今のままで十分」「お金がかかる」など、家族が乗り気でないと、口の中に違和感があっても、遠慮する利用者もいます。
でも、何歳になっても、たとえ歯が1本もなくても、口腔ケアや歯科医師や歯科衛生士による定期検診は必要です。「口腔内が健康であれば、家族の介護もラクになる」ことを伝えて、理解を得るように努めましょう。
利用者、そして家族に対し、口腔ケアに対する意識を変えるサポートをすることも、ホームヘルパーに求められる口腔ケアのひとつと言えます。
本誌では、ホームヘルパーに求められる⼝腔ケアについて、詳しく紹介しています。
監修/城 明妙(しろ あけみ)
⻭科衛⽣⼠。デンタルサポート株式会社 ⻭科事業部ヘルスケア課。⻭科医院に勤めた後、⾼齢者・要介護者の在宅・施設・病院等での訪問⼝腔ケアなどに従事。現在はその経験を活かし、幅広い世代や⻭科衛⽣⼠養成学校での講師、多職種に向けた⼝腔保健セミナーを担当。イラスト/⽯⼭綾⼦