毎回、気をつけてサービスを提供していても、時に起こってしまう介護事故。『へるぱる 2024 11・12月』では、実際に裁判に発展した2事例を詳しく見ていきながら、問題になったのはどんな点だったのか、事故から学べることを検証していきます。
完全に防ぐことは難しいのが介護現場の事故ですが「防ぐために、そして事故が起きた時にトラブルを招かないために、事前にしておきたいことは、基本に忠実な準備です」と、介護・福祉系のトラブル解決に多く携わっていらっしゃる外岡先生。以下、その基本のポイント2つです。
●事業所においては、計画をしっかり立てる
サービス提供を開始する前には、担当者会議などとは別に、事業所内で打ち合わせをして、利用者に起こりうるリスクを検討しておきましょう。予測して、計画を細かく立てておくことが事故防止の第一歩です。
●利用者・家族との間においては事故に関することを口頭でも説明しておく
- 事故は起こりうるものだと理解を求める
- 損害保険について説明する
- 緊急時の連絡手段を確認する
利用者の安全に十分配慮していても、利用者の自由を尊重し自立を支援する上では、事故を完全に避けることは難しいでしょう。伝え方には配慮が必要ですが、その点については理解を求めましょう。一方で、あまりに高リスクなことは「利用者のために」と頑張り過ぎず、断る勇気も必要です。
本誌では、上記2つのポイントを詳しく考えるにあたって、実際の裁判例を2例見ていきます。また、万が一事故が起きてしまったら、その時に取るべき対応についても解説します。ぜひ、事業所内研修の資料としてご活用ください。
監修/外岡 潤
介護・福祉系のトラブル解決に特化した法律事務所「おかげさま」代表。公益財団法人介護労働安定センター雇用管理コンサルタント。紛争を話し合いで解決する技術「メディエーション」を研究し、介護トラブルの裁判外紛争解決手続(ADR)活動を推進。著書に『利用者・家族・スタッフ別にポイント解説! 裁判例から学ぶ介護事故対応』(第一法規)などがある。
イラスト/藤原ヒロコ